「デ・キリコ展 Giorgio De Chirico: Metaphysical Journey」(@東京都美術館)を観ました。ギリシャ生まれのイタリア人芸術家 ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)の大回顧展です。
デ・キリコはニーチェなどのドイツ哲学に影響を受け、「形而上絵画」という独自の作品を制作。ダリやマグリットなど、後のシュルレアリスムの画家たちに大きな影響を与えました。
デ・キリコの作品のテーマやモチーフは時代によってさまざまに変化し、ざっと「形而上絵画以前」「イタリア広場」「形而上的室内」「マヌカン」「剣闘士」「谷間の家具」「ネオ・バロック」「新形而上絵画」などとなっていきますが、何度もさかのぼって同じモチーフを描いています。
メインアートの「形而上的なミューズたち」(1918年)は、いわゆる「形而上的室内」の作品です。
興味深い作品が多々あったのですが、ひとまず買ってきたポストカードを見ながら一部紹介。
「南の歌」(1930年頃)、「17世紀の衣装をまとった公園での自画像」(1959年)
「神秘的な水浴」(1965年頃)、「オイディプスとスフィンクス」(1968年)
「オデュッセウスの帰還」(1968年)、「イーゼルの上の太陽」(1972年)
「南の歌」は、ルノワールがお気に入りだった時に描いたもの。マヌカンをルノワール風に描いています。
「17世紀の衣装をまとった公園での自画像」は、古典に目覚めた頃に描いたもの。コスプレ自画像は楽しいです。レンブラントとかもちょいちょいコスプレ自画像を描いていましたよね。
「神秘的な水浴」は、友人ジャン・コクトーの本『神話』の挿絵として制作した連作版画に基づく油彩画。いまこの本がどこで読めるのかはわかりませんが…。絵はたいそう面白いですよ。
「オイディプスとスフィンクス」は、たびたび描かれるギリシア神話の登場人物たちがモチーフの絵画の一枚。小首をかしげたおちゃめなポーズのオイディプスと、苦笑するような笑みを浮かべた親しみやすいスフィンクスがかわいいです。
「オデュッセウスの帰還」は、それまで描いてきたものがいろいろ詰め込まれた作品です。向かって左の壁には「スペイン広場」の絵が飾られ、「谷間の家具」を想起させるタンスや椅子もあります。そして室内に神話の登場人物オデュッセウス。
ちなみに「谷間の家具」というのは、デ・キリコの幼い頃の記憶によるモチーフ。かつて住んでいたアテネでは地震が頻発し、そのたびにに家々から家具が外に運び出されていました。その様子から着想を得て、本来内にあるものが外にあったり、外にあるべきものが室内にあったりする絵画を描いています。
「イーゼルの上の太陽」は、電気コードでつながった光る太陽と影の太陽というモチーフが面白い作品。太陽や月は、友人アポリネールの著作「カリグラム」(1930)の挿絵に描いたものだそう。これもまた、いま挿絵付きで読めるのかは分かりません…。
こんな感じで、私は中~後期の作風が好きです。
また、面白かったのは彫刻と舞台衣装。彫刻は絵画から抜け出したようなマヌカンタイプの人物の小ぶりなブロンズ像。ピカピカの金や銀のメッキが施されていて、お部屋に飾りたくなるようなちょっとかわいい彫刻です。
衣装はスケッチと現物の展示がありましたが、その中で特に目を引いたものを、画像がないので私のつたないイラストでご紹介。
「バレエ『プルチネッラ』の衣装 ビショップスリーブと肩章が付いた背中綴じスモック」(1931)
形而上絵画はアンドレ・ブルトンらシュルレアリストたちにもてはやされるも、古典に回帰した頃から評価が一転し、彼らとの仲が険悪になります。また、複製や反復という概念を取り入れた制作方法もシュルレアリストからはけちょんけちょんにけなされてしまいますが、アンディ・ウォーホルはこれをポップ・アートの先駆けと見なし高く評価しました。
デ・キリコは「シュルレアリスムの画家」と言われてしまいがちですが、今回作品の全体をよく見て、シュルレアリスムとは一線を画す独自路線だったのだなということがなんとなく分かりました。
開催概要
会期:2024年4月27日[土]~8月29日[木]
会場:東京都美術館
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館、朝日新聞社
後援:イタリア大使館、J-WAVE
会場:東京都美術館
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館、朝日新聞社
後援:イタリア大使館、J-WAVE